2023年12月21日 07:00
70年代初頭、オーディオビッグバンの如く日本では本格的なオーディオブームが巻き起こります。
家電メーカーに加わり音響部品や測定機を祖業としてきたメーカーもオーディオ分野に乗り出し、多くのメーカーが乱立しオーディオ業界が確立して行きました。
そして80年代に入り、経済拡大期の波に乗り大きな市場を形成し世界中に輸出されていったのです。
そんな栄華を誇った日本のオーディオ業界も、90年代に入るとバブル景気の崩壊と共に縮小傾向になります。
90年代前半のオーディオ各社は生き残りをかけサバイバル戦略を模索し始めます、そういった意味では拡大成長してきた業界は初期化(デフォルト)したようにも感じます。
一つの方向へ向け秩序が安定していた80年代までとは打って変わって、オーディオ業界に再びカオス(混沌)の強風が吹き荒れます。
ケンウッドは、パーソナルユーザーを取り込むためにミニコンポに生き残りをかけます。
デノンは、デジタル時代を先取りしてホームシアターや高級ハイエンドアンプを武器に勝負を仕掛けてきます。
ヤマハとマランツは逆に、それまでのミドルクラスの技術を流用してフルサイズコンポでのハイスペックアンプを安価に出すという価格戦略を打ち出します。
これらのメーカーの戦略は、後にそれぞれが正しい選択だった事が証明されます。
そんな中で、方向性がなかなか定まらなかったのがオンキョーとサンスイ、そしてスピーカーではダイヤトーンでした。
これらのメーカーには何を主力にしていくのか見えない時期があり、一貫性の無い中途半端な製品が多々見受けられます。
しかし、オンキョーはその後フルサイズのインテグラシリーズに並行してハイコンポのインテックシリーズを出します、更に小型高性能スピーカーに経営リソースを集約し、この両面でいく戦略でカオスを遅ればせながらも抜け出します。
最後まで方向性を見失っていたのが、アンプの巨匠サンスイとスピーカーの大御所ダイヤトーンではなかったかと思います。
サンスイもアキュフェーズやラックスマンのように、ダイヤトーンはJBLやBOSEのように、慌てず騒がず一度得たトップの座を一環とした姿勢で耐えて忍んで堅持することに注力すべきだったと思うのです、両社は時代やライバルの動向に翻弄され体力が消耗していったことは明らかでした。
そんな状況の中、サンスイは主力のミドルクラスのアンプで、ダイヤトーンも同じくミドルクラスの高音質スピーカーでまさかの大敗北、時代に翻弄され自身を見失い常勝神話が崩れた企業はあっという間に衰退し明るい未来さえも失ってしまいます。
90年代は全ての業界で、「何が起きても変じゃない」という超カオスな時代だったのです。
それにしても当時、サンスイのオーディオ事業からの業種転換後の経営破たんとダイヤトーンのオーディオ事業からの撤退は私にとってあまりにも衝撃が大き過ぎました。
「カオスの時代は大きなピンチでもあるし同時に大きなチャンスでもある、経営者の真の能力が試される瞬間である」、私はオーディオ界を通して大きな経営の学びを得たのです。