2023年11月20日 07:00
生演奏や高音質のオーディオ製品で音楽を愉しむことによって耳は音質に確実に敏感になっていきます、ここでオーディオに対する耳の成長ステップというのが存在しています。
先ず最初のうちは低音域に神経がいきます、豊かに低音が響いているかは解り易い尺度でもあります、そのうち低音域の質の違いが解ってきます。
同じ低音でもレスポンスが早くて切れが良く硬質な感じの低音もあれば、部屋に充満するようなドロッとした粘質系の低音もあります、こういった音色の違いは各種のスピーカーを日頃から聴き比べていると自然に解ってくるものです。
次の段階は高音域です、これも最初のうちは高音域が出ているかとか伸びているかなどですが、そのうち同じドラムのハイハットやクラッシャーでも響き方がまるで違うことが解ってきます、音の響きや余韻などに神経がいくようになるとかなり耳は肥えてきています。
そして最後に到達するのが中音域です、中音域は多くの楽器や声の主音域であり音質の要となる領域で出て当たり前の領域でもあるのです、それだけにスピーカーの善し悪しが全て出るとも言えるし最も違いが解りずらい領域であるとも言えるのです。
ボイスでは「艶」と言われている生の声に近い繊細な響きかどうかとか、ピアノやサックスなどが張り出しているがうるさく感じないとか、微妙な音質の違いを聞き分けるにはかなりの経験が必要になってきます。
こういった音質そのものではなく全体的な音の傾向を「音質」ではなく「音色(ねいろ)」と言い表します、音質ではなく音色を感じるようになるとかなり耳が肥えてきていると思います。
また不思議なことに音色に大きく関与しているのが本来であれば悪者扱いされる「歪」です、どの周波数帯域で僅かな歪が生じているのか、この歪によって音色が大きく変わってきます。
歪はアンプとスピーカーに多く存在しています、その固有の歪が音の個性となって現れるのです、ちなみにデジタルアンプは歪がゼロです、その意味ではスピーカーの個性を出しやすいとも言えます。
最初のうちはどのスピーカーやアンプで聴いてもみんな良い音に感じます、それはまだオーディオの耳に成長していない証拠です。
耳もステップを踏んで成長していくものです、経験を通して音質や音色を聴き分けられるように可能な限りいろいろな製品の音を聴いてほしいと思います。
どんなことも一朝一夕では叶わないということです、オーディオも自分の耳が熟すのを待つという余裕がないと本当の意味でオーディオを心から愉しめないのです。
そして本物と言われる名機の音を何度も聴いて耳を善い音に馴らしておくことも重要です、なぜなら比較する音が悪ければ善い音かどうかを聴き分けることができないからです。