2022年5月 3日 07:00
オーディオ道楽封印の10年間ほどで、オーディオ製品のスピーカーの傾向が小型ブックシェルフとトールボーイが主流になった原因が知りたくて、時代背景やメーカーの目指すビジョンなどいろいろと調べながら考察してみました。
見えてきたのが、1995年頃からオーディオとホームシアター製品が家庭に1台の時代から個人で1台の時代になってきたということです。
したがって、大型のフロア型や大型ブックシェルフは広い部屋が必要とする為に敬遠されるようになったのではないかというのが第一の理由として考えられます。
例えば70~90年代のオーディオマニアは、音楽を楽しむ為に広い部屋を求めて郊外に引っ越ししたり、更に経済的に余裕のある人は都内でも大きな部屋を借りるか自宅とは別にオーディオ専用の部屋を借りていました。
ホームシアターとオーディオを同じコアシステムで組もうとすると、最低でも10畳の家具などがほぼ無い状態の空間が必要になります。
本格的なサラウンド効果を愉しみ、ライブやコンサートなどの臨場感を再現するには更に20畳近くないと無理です。
そうなのです、オーディオとホームシアターを趣味として本格的に行うのに最もお金がかかるのは高級な機器ではないのです、それは音空間、つまり音楽を聴く空間を得る為の家賃なのです。
今の時代にそこまでして音に没頭できる人は極僅かです、オーディオとホームシアターは既に一部の人の限られた趣味の世界から極当たり前な存在になってきたのです、つまり家電の一つになってしまったのかもしれません。
そういう意味では手軽に音楽や映画を良い音で楽しみたいという人が増え、個人に1台時代の利用シーンを考えると6畳から8畳程度の部屋になります。
しかも、ラックやドファーを置くととても大型スピーカーの置く場所は無いのです。
また、狭い部屋で大型スピーカーを置いて短距離で聴いても、低音と高音のスピーカーユニットの位置から音がバラバラになってしまって意味を成さず、むしろマイナス果の方が大きくなります。
そこで書棚やローチェストの上に置け、手軽に音楽や映画を楽しめるような製品作りを各メーカーが行うようになった、こう考えるのが正解かもしれません。
また、手軽にブルーレイなどで高音質の映画を楽しめるように設置に簡単なサウンドバーなる製品が誕生していました。
フロントだけでの疑似サラウンド方式なのですが、70年代にまだサラウンドプロセッサーが無い時代にマニアの間で流行ったマトリックスサラウンド装置の自作品のようなイメージしかなく私には今更の製品であり触手がまったく動きません。
オーディオメーカーは、バブル経済期にスピーカー598戦争やアンプ798戦争が勃発し業界全体が深い傷を負いました。
当時は、オーディオマニアが求める匠技の製品をこれでもかという程に経営資源を投げ出し物量勝負を繰り返しました。
競争に勝つために赤字覚悟で数年間激しいシェア争いを繰り返したのです、まさにオーディオ戦国時代だったわけです。
メーカーによっては毎年のように、常に新技術を取り入れた魅力的な製品が次々と誕生しました。
そのバブル経済期が終焉し多くのオーディオメーカーが経営危機に陥りました、その結果1990年代中盤以降は新しい製品がほとんど生まれなくなりました、作りたくても経営状況が許さなかったわけです。
世のマニアもバブル崩壊後は収入半減で大きな痛手を受け、とてもオーディオ機器に回すお金も余裕も無くなっていました。
そこでオーディオメーカーは、マニアではなく一般消費者を対象にした利益率が良い個人向けのエントリークラスの製品に舵を切りなおしたのです。
それまで学生向けだったミニコンポが家庭用として台頭し、まさに世はエントリークラスのオーディオ製品で溢れかえりました。
更に、イマイマのオーディオメーカー各社の製品を調べた結果、見えてきたのが手軽なエントリークラス製品と贅を尽くした本格的なハイエンド製品とに綺麗に分けてシリーズ化していました。
オーディオの世界も、多分にもれず二極分化を起こしていたのでした。