2021年11月15日 07:00
私が自分でコンポを買って、本格的なオーディオの道にハマり出したのは大学2年生のときです。
子供の頃から友人に比べて音への拘りは強かった気がします、小学4~5年生の頃はトランジスタラジオが出始めて世の中が真空管からトランジスタへ急速に移行し始めた電子業界の新旧交代時代です、子供向けの科学雑誌を手当たり次第に読みこんでいました。
中学に入るとポケットに入るくらいの小型のトランジスタラジオを買ってもらい、学校でイヤホンでこっそり聞いたり深夜番組に没頭していたものです。
それまでは、真空管ですから持ち運びもできないしポータブルオーディオ時代の幕開けだったのかもしれません。
当時のトランジスタラジオは非常に高価なものでしたが、買ってもらう口実が「ラジオの教育番組を聞く為」でした、よくもまあ悪知恵を考えついたものです。
そして、好きだったアメリカンポップスやフレンチポップスをできるだけ良い音で聴く為に、トランジスタラジオに中古の大きなスピーカーを繋いでは楽しんでいたものです。
ラジオに大きなスピーカーを繋ぐと音が良くなるというのは、もっと時代を遡り小学1~2年生の頃にある体験をしていたからです。
当時、今では世界ブランドとなっている有名な繊維会社の工場が家から自転車で通えるところに在りました。
その工場の機械設備の全てを任されていたのが祖父でした、手先の器用な祖父は当時いろいろな発明をしては会社に貢献していたようです。
また、休みの日には頼まれたラジオの修理や自転車の修理を行っては近所の家から重宝がられていました。
家の庭先には黒い自転車がずらりと並び、家の中には木箱に入った真空管ラジオが山と積まれていました。
ある日、これまでに見たこともない大きなラジオが祖父の部屋に鎮座していました。
当時の家庭用ラジオは、大きなものでもケーキの箱程度でしたが、それはおそらく小型冷蔵庫くらいはあったような記憶があります。
その大きな家具のようなラジオの修理が終わって、音を出しているときに私はたまたまその音を聞いてしまったのです。
今まで聞いていたラジオの音ではなく、何とも言えない音の響きがあるのです。
男性の声は太く女性の声はキラキラと輝き、クラシック音楽が足元から響いてくるような音だったのです。
その記憶があまりにも鮮明すぎて、以来「良い音は大きなスピーカーで」という妙な偏見が入り込んだのかもしれません。
そういう記憶が、トランジスタラジオに大きなスピーカーを繋ぐという発想になったのです。
当時のトランジスタラジオには「外部SP」というミニジャック端子が付いており、これは外部にスピーカーを繋ぐ為のコネクタです。
これにいち早く気付いて、近所の電気屋で中古のスピーカーを買って繋いだのです。
当時の電気屋さんは新商品の他に下取りも行うのが常識化しており、中古品も販売していたのです。
時代が変わればビジネス手法も変わる、当然ですが時代の流れに合わせてみんな逞しく生きているのです。
そのスピーカーはエレキギターのアンプに繋ぐPA用の小型スピーカーで、家での練習の為に使うものなのか30Cm角程度のものでしたがトランジスタラジオの音が見違えるほど良くなったのを記憶しています。
それを見た親父からは、「じいちゃんの血を引いたな」と言われたのを覚えています。
また、同時に好きなアメリカンポップスやフレンチポップスのアーティストのLPレコードをお小遣いを貯めて買っては親父のステレオでこっそり楽しんでいたものです。
まあ、当時のコンポってきっと今の5万円程度で買えるエントリークラスのミニCDコンポの比では無いほどのダメ音だったと思うのですが、それでもラジオの音に比べたら雲泥の差で耳が裂ける程の大音量で聞いては母によく怒られたものです。