
中小企業のための補助金・助成金(10)
補助金が公募される時期
補助金は公募される時期がだいたい決まっています。例えば中小企業庁などの補助金では国家予算に流れがありますから、その流れに沿って経緯を見守ることができます。おおよそ夏くらいに概算要求が各省庁から財務省に出されます。そこでどんな補助金が計画されているかがわかります。財務省を通過して予算案が出来上がるのが12月頃です。その後、国会にて予算が承認され1,2月頃に補助金の事務局が公募されます。事務局が決まればその後は2,3月に補助金公募が開始されます。この場合は補正予算の補助金ですね。通常の補助金5月頃に公募開始されます。
また上記以外に年に何回も公募されているものもあります。ものづくり補助金や事業再構築補助金(新事業進出補助金に変わりました)などですね。こういった補助金は公募→締切→採択流れで、3~4か月ごとに繰り返し公募されています。比較的複数年同じ補助金が予算化されているものもあれば単年度で終わるものもあります。同じ補助金が来年もあるとは限りません。狙っている補助金があるならば早めの段階で公募できるように準備しておきましょう。
補助金は政治の流れに大きく影響をうけます。いまなら所得倍増を掲げているのでそれを満たすような企業が採択されます。特に12月~1月は政治・国会の状況を観察しておくと次に出てくる補助金を把握しやすくなります。

中小企業のための補助金・助成金(9)
補助事業完了後も終わりではない
実績報告書や各証憑(注文書、請求書等)を提出し入金まで終わったら補助事業は完了です。ですがその後もやらなければならないことは有ります。行った補助事業のその後を報告する義務が5年間あります。
なぜそんな義務があるのでしょう。そもそも税金で行った事業なので利益が出たら返す必要があります。補助いただいたのに利益が出ても自社だけのものというものは通りません。もちろん利益が出なかったりまだまだ開発する要素があって利益化できないのであれば返金する必要はありませんが、利益が出たのなら返金しなければなりません。それらの状況を確認するために報告を行うのです。
ただ、そんなにうまくいく事業は多くありません。そこで補助金を出す組織は、例えば中小企業庁であれば、雇用を増やしたり、現在であれば給与を増やすことを要求したりしています。それらが守られているかのチェックも含まれます。また補助事業で購入した装置も補助事業以外の使用は禁止されています。特にサーバーやPCなど汎用性が高いものは注意が必要です。
補助金は税金がもとになっていますのでいろいろな制約が付きますが、それでも事業を推進するにあたって非常に有用な制度なのでぜひ利用していただきたいです。

中小企業のための補助金・助成金(8)
完了検査から入金まで
補助金に採択され交付申請が通り交付が決定したらいよいよ事業の開始です。しかし補助金はここからが本番です、事業をやりきる必要があります。補助事業の完了は、実績報告書と各証憑などを提出し完了検査を通過する必要があります。
完了検査は補助金によって一部変わりますがほぼ同じです。補助金をもらうためには支払った各証憑が必要となります。ここでその補助金の手引きをよく読み込んでおく必要があります。例えばよく問題となるのはWeb注文で購入する場合です。一般的な取引でだと「見積書」「注文書」「納品書」「請求書」が発生します。これでも足りないのですが、Web注文ですと見積書や注文書が無い場合もありますので、それらのエビデンスとなるものを残しておく必要があります。Web注文の場合は主に画面のスクリーンショットを保存するかメールで通知されるものを控えますが、画面のスクリーンショットを取り忘れると大変です。不安な場合は各画面のスクリーンショットを保存しておくとよいでしょう。
また一般的な取引をしたとしても「注文請書」を発行しない場合が多いです。また「支払いの証憑」も銀行振り込みでなくカード決済だった場合は「領収書」などを取得する必要があります。これらも手引きを読み、抜けが無い様にしなければなりません。一つでも証憑が抜けるとその項目に対して補助金対象外になってしまいます。証憑のエビデンスは非常に重要なので注意を払っておきましょう。
完了検査は電子申請の場合だと現地検査が省略される場合がありますが、場合によっては現地検査が実施されます。現地検査は現場に検査官がやってきて、開発物や納品物、そして証憑を一枚一枚確認していきます。ここではすぐ証憑を出せるようにファイリングしておく必要があります。現地検査は以前は必須だったのですが採択数が多い補助金などは最近は省略される傾向がありますので、少し楽になっています。ただ不正が疑われている場合は最悪会計検査院が入りますのでそうならないように補助金関連の取り扱いは厳重注意が必要です。
完了検査が終われば通常は1か月程度で入金されます。採択数が多い補助金によってはもう少し時間がかかることがありますが、最近は3週間くらいで入金されるようになっています。入金が確認できれば補助金は完了となります。ただし、5年間は報告義務があるので作業はまだ続きます。

中小企業のための補助金・助成金(7)
電子申請
最近実施される補助金は電子申請が多いです。電子申請だと事務局側も大量の書類を管理しなくて済みますし申請側も大変楽になります。締め切りの消印を気にしなくてよくなりました。中小企業庁の補助金はGビズIDが共通ログインとして使用されています。GビズIDは申請に少し時間がかかるので補助金申請を考えている方は早めに取得されたほうが良いでしょう。
電子申請では記録が残りいつでも閲覧できるので便利です。申請した日時も記録されますし、その旨もメールで通知されますから正確に申請できたことがわかります。また申請後においても差し戻し処理が全て記録されますので対応し忘れなどが無くなります。各資料も電子データで添付する形になりますので印刷してファイリングする手間が省けるのが非常に助かります。
ただし、すべてが電子上のデータで出来るわけではありません。証憑などは通常通り紙面で行っているものもあります。それらはPDFにして添付する必要があります。すべての証憑を電子化しなければならないので、特に契約書が発生しているときは少し不便さがあるかもしれません。また申請サイトにログインする場合は多要素認証として携帯電話へのSMS送信や、GビズIDであれば専用アプリケーションによる認証が発生します。小さな企業でしたら申請者が管理することもできますが、そこそこ大きな企業だとその認証を誰が行うかの問題も生じます。
電子申請は大変便利ではありますが新たに労力がかかることもあります。とはいえ申請や事業完了後の処理などは格段に便利になっていますので、これからも便利な方法へ発展していっていただければと思います。

中小企業のための補助金・助成金(6)
誰が審査しているのか
補助金のなかで特に中小企業庁がおこなっているものづくり補助金など多くの企業が採択されるものがあります。最近では第〇次という形で年に何度も申請機会があります。こういった補助金では審査の数も膨大になります。いったいどこで誰が審査しているのでしょうか。申請をするにあたり誰が見るのかは重要な情報になってきます。
こういった補助金はまず取り扱う事務局が選ばれます。そのあとで補助金が公募されるのですが、実際に審査をするのはその事務局ではなく外部の委託された審査官たちです。その審査官とは主に中小企業診断士や税理士などです。その方たちが大量の申請を審査していくことになります。
審査する数は膨大なので当然審査時間も短くなってきます。申請する側は自分たちの理念や想いを載せて隅々まで詰め込んで申請書を書くわけですが、それらが全て審査員に読み取られるわけではありません。審査する方は自身で事業を生み出して経営されていた方もいるとは思いますが、そのような方は少ないとみておいた方が良いです。審査には公開されている審査項目がありますので、その内容に合致するかどうかを機械的に見ていくことが多くなってくるようです。
よって申請書には審査項目に合致することをわかりやすくアピールすることが重要になってきており、審査しやすい申請書が通りやすくなっているようです。補助金によっては不採択だった場合にその理由を聞くことが出来ます。それらの理由をみて再度改善して申請に臨むことが出来ますので、わかりやすく審査官にアピールできると採択への道は近づいてきます。