2024年6月10日 07:00
ワインや日本酒のソムリエは何故香りと味で数百種類を見分けることができるのでしょうか、これには味覚と嗅覚の複雑な関係があります。
味覚は舌にある味センサーで味の成分を検出し、大脳皮質42野・11野・3野を経由して最終的に味として知覚されます。
味や香りは絶対感覚と相対感覚の合成により結論付けされます、つまり特定の味が濃いとか他のものと比較して香りが高い低いなどです、ソムリエはこういった絶対的な味や香りと相対的な比較によって見分けているのです。
大脳皮質11野は味覚と同時に嗅覚を司る記憶領域であり、ソムリエは味と香りとの絶妙なバランスを総合的な情報として記憶しているのです、したがってソムリエでも嗅覚を奪われるとほとんど見分けることができなくなってしまいます。
驚くことに味のプロであるソムリエでも見分けることが不可能となる嗅覚を奪われても味を見分けられる人が存在しています、こういう人は実は味や香りだけではなく音を聴き分ける聴覚も鋭い人なのです。
この人はどのようにして複雑な味や香りを検知し微妙な音色を聴き分けることができるのでしょうか、それが「共感覚」と呼ばれる特殊な感覚です。
音質や音色を聴き分ける聴覚も味覚や嗅覚と同様に絶対的な音と相対的な音によって聴き分けられます、しかし共感覚を持つ人はこの最終結論を別の感覚と合成して更に共有させながら記憶している人です。
音質でいうと普通は低音が出ているとか高音がきつく感じるなどの絶対的な音と相対的な音そのものを感じ記憶します、ところが共感覚の人はその総合判定として音ではなく色や触感などに置き換えて記憶しているのです。
例えば色だととブルー系とかレッド系、更に濃いブルーとか緑が混ざったブルーなどという感じです、だから微妙な音の違いも聴覚の記憶ではなく色の記憶によるものなので複雑な音質の違いも聴き分けられるのです、触感ですとざらざらしたとかつるつるしたとか粘っこいなどという感覚に置き換えているのです。
アンプは一定のレベルになると同じ音質や音色になり相当耳が肥えている人でもブラインドテストではまったく聴き分けることはできません、でも共感覚を持っている人だとブラインドテストでもピタリと当ててしまうのです。
この共感覚に関しては現在研究されつつある領域であり、脳の構造などによる違いなどあらゆる方面から探求されています。
ロボットでも味・香り・音は見分けられますが、デジタルに変換されての比較ですから、「**に90%、**に70%近い」という見分け方しかできません。
人間の脳とは極めて優れているのです、そしてAIソムリエやAI音響評論家が誕生するとしたら、そのアルゴリズムは間違いなくアナログチックな「共感覚」をデジタルで計算できる方法を考案しないと人間以外に行わせるのは不可能だということです。