2024年6月 3日 07:00
音質や音色に敏感になるには耳を鍛えないといけません、正確に言うと耳というよりも聴感覚、つまり音情報を詳細に処理する脳の領域(聴覚三野)を鍛える必要があります。
例えば味や香りのプロがいます、これを生業にしている人は常にいろいろな味や香りに接し味や香りの感覚を処理する脳の領域を鍛えています。
だから味を詳細に分析でき隠し味に何を使ったかが解り、微妙な香りまでを嗅ぎ分けられるのです、同じようにいろいろな音を意識的に聴くことで聴感覚が鋭くなっていきます。
皆さんは日常的に自然界に存在するいろいろな音に接しています、でもその音に興味を持って意識的に聴こうとする人はほとんどいません。
例えば耳に聞こえないような緩やかな空気振動を意識して聴こうとする人は極めて少ないです、同じようにドアの閉まる音、水が落ちる音、人が歩く音、意識を集中して聴くと凄く複雑な音のハーモニー(合成)によって全ての音が作られていることが解ります。
自然界に在る音全てが単純なカタカナ擬音で表せるような音ではありません、更には同じ音でも聴く場所によって耳の位置によってもまったく聴こえ方が異なります、このように音を意識的に聴くという行為がどんどん聴感覚を鋭くしていくのです。
私は常にいろいろなものを叩いて音の響きを意識的に聴くようにしています、同じお皿でも陶器や金属などの材質によって、大きさや形状によって、また叩く場所によっても音が微妙に異なります。
この時に特に意識して聴くのが響き方と余韻です、意外と長く音色を変化させながら鳴り続けていることが解ります。
そういった原音を正しく聴こえるように脳を鍛えると、オーディオ機器が発する音が正確に出ているか否かが解るようになるのです。
重要なのは耳に聞こえる主音での音ではなく響きや余韻といった音色を聴き分ける必要があるのです、音楽をやっている人は何故耳が良いのでしょう、それは常に本物の楽器の音色に接しているからです。
普通の人の耳には聴こえないはずの30Hz以下の音や17KHz以上の音の存在が何故解るのでしょうか、それはそういった低い周波数の音が混在していると中音域の音が微妙なうねりを起こして揺らぐからです、この揺らぎを聴いて間接的に超低音域の音の存在を聴き分けるのです。
同じように17KHz以上の超高音域の音は音が当たる髪の毛や顔の皮膚が刺激され身体全体の皮膚表面がざわざわした感覚を覚えます、これで超高音域の音の存在が解るのです。
また聴感覚を鍛えると耳でも解るようになります、それは高音域のピアノなどの音がハーモニックス(倍音合成)効果によって低音域と同じように細かく揺らいで消えていくからです、これが超高音域が入っていないと起こりません。
「耳に聴こえない音の存在」、これを聞いた瞬間に否定する人がいます、そういう人は聴き分けようとも思わない人です、「耳に聴こえない音イコール存在を知る方法がない」と脳が決めつけてしまうからです。
こういう人は思い込み思考によって脳が聴き分けることを放棄します、つまりこれが脳の処理能力劣化による聴感覚が鈍いということです。
音は耳で聴いているのではないのです、耳は音を拾って脳に電流で伝達しているだけです、音を聴いて感覚として処理しているのは実は脳(聴覚三野)なのです、これを理解して聴覚を鍛えないと正しく音色を聞き分ける能力は一生得られないでしょう。
私はギターとドラムを遊び程度にやっていました、なので弦を擦る指の「キュッ」という音でどの弦を触ったのかとかドラムのどの部分を叩いた音なのかが凄く敏感になっています、楽器をやらなくなった今でもいろいろな物を意識してあらゆる部分を叩いて聴くようにしています。
ところで自然界に存在する音とオーディオ製品で聴く音の違いは何でしょうか、この答えが先の30Hz以下の音や17KHz以上の音が入っているか否かなのです、これを聴き分けられなければ正確な音質の評価はできません。
高級なオーディオ製品の音を幾ら聴いても、聴こえる範囲内の音だけを拾って意識しているうちは聴感覚は鋭くなりません。
オーディオ製品の音質を聞き分ける能力を鍛える場合、重要なのは今聴こえている絶対的な音を聴いて「高音が綺麗」、「低音が弱い」などと評価していてはいけません。
今使っているアンプやスピーカーの性能(スペック)を理解したうえで聴く必要があるのです、これが極めて難しいのです。
つまり、今聴いているシステムの性能を知って、アンプやスピーカーを変えるとどんな音色に変化するのか、それを予見しながら特徴的な幾つかのポイントだけを抑えて聴く必要があるのです。
それが解らなければ何をどう変えると好みの音色に近づくのかも知ることができません、これらがきっちり聴き分けられるようになるとオーディオの愉しみは一気に1万倍愉しくなるのです。
目に見えない精神や心の存在、耳に聴こえない音の存在、それらは全てが脳の感覚(センシング)によって把握することができます、脳を鍛えなければこれらの存在は否定の対象であって愉しむ対象ではなくなってしまうのです。
脳の感度(センシング)と処理能力が優れている人は見えない存在も聴こえない存在も常に意識して全方位の思考ができています、逆に言えば本当に聴感覚が鋭い人は他者の気持や流れといった見えないものに対する超肌感覚そのものが鋭い人だということです。
「場の空気が読めない」、「他者の気持に鈍感」という人とはどのような人なのか、これでお解りいただけると思います。