2024年3月 6日 09:00
経営者のジレンマの一つに「売る為の施策」があります、多くの経営者は「こんなに良いものなのに何故売れないのか?」と嘆きますが、ズバリ私の意見は「世間がそれに価値を見いだせないから」だと言いきれます。
経営者の多くは基本的にマズローの欲求ステージでいえば「自己実現」の領域を目指しているように思えます、自身の夢や思いを形にして生活できれば最高だと思っています。
起業家の多くは大きな勘違いを起こしているのかもしれません、マズローの欲求ステージは下位にある欲求が満たされて初めて上位の欲求が満たされるのです。
最下位にある「生存の欲求」は食べる・寝る・排泄がそれに当たります、つまり生きていくための三大欲求です。
これが満たされると次の段階の「安全の欲求」が芽生えます、これは安全な場所の確保であり家を持つことに加えて病気や事故防止などの防衛も含まれます。
次が「社会的欲求」で社会に必要とされているかという、自身が他者に必要とされているという貢献欲求になります。
これらがすべて満たされて初めて高位欲求第一段階の「承認欲求」が芽生えてくるのです、これは組織や団体などで自身が「価値ある人として認められたいと」という欲求になります。
この「承認欲求」が満たされて初めて「自己実現」という自己能力を最大限に活用して成功したいという欲求になり、これを追求するのが一つの経営者の姿だと思います。
何故あえてマズローの欲求階層を示したかというと、起業家の多くの人が段階を踏まずにいきなり「自己実現」をどこかで知ってそれを目指しているのではないかという推測ができるからです。
つまり、「社会的欲求」や「承認欲求」が満たされないままに「自己実現」を目指すと本来の自身の欲求からくる自然な行動ではなくて、無理やりにそれを実現しようとすることで多くのでっち上げを行うようになってしまうということです。
段階を踏まずにでっち上げによる行為は過度の自己表現や言いわけに始終し、そして自己防衛が優先されてしまいます。
したがってそこには「価値ある商品やサービスを提供する」という本来のビジネスの原点から大きく乖離してくるのです、それが私の言う「世間がそれに価値を見いだせないから」ということなのです。
これは商品やサービスだけではありません、自身の存在や能力に他者が価値を見出せているでしょうか?
ハッキリ言いましょう、価値の無いものを他者は欲しがりませんし買いません、例えお付き合い程度はあっても継続的なパートナーやクライアントにはなり得ないのです、それは自身が一番解っているのではないでしょうか?
欲求段階を一つ一つステップアップしてきた人は自身の欲求が満たされる方法を学んできています、そして他者に関してもそういう見かたや考え方ができるようになります。
だから価値に対してお金を払うという当たり前なことを当たり前に思考し、そして自然にそれを行動することができるのです。
これをショートカットしていきなり「自己実現」の欲求では人が寄ってこないのは当たり前であり、ましては売れないのも当たり前なのです。
何故なら他者が何を求めているのかという正確な価値欲求心理を理解できていないからです、したがって真の価値を提供することができないのは当然のことなのです。
「売れない」と嘆く前に、「世間は何に対して価値を見出しお金を払うのか」、というビジネスの原点に立ち返っていただきたいと思います。
そもそも、自分は何に対して価値を見出しお金を払おうとしていますか?
自身の欲求心理は正当化し、他者の欲求心理を無視していては何時まで経っても売れないどころか気が付けば孤立することになってしまいます。