理由もなく突然力が出ず何に対しても無気力になってしまうという周期があります、そんな時は「天が与えた休暇」と考えしばらく仕事のことを考えずに心身を休ませることが肝要です。
私事ですが、この突然無気力になる症候群が最初に起きたのは起業1年後のときです、起業前の3年間は毎日が徹夜状態でも疲れ知らずで体力も精神力も漲っていました。
ところが起業後1年ほど経ったころ突然起きられなくなったのです、気が付くとお昼を回っていたなど珍しくはありませんでした。
ここで正確に言っておきますと寝ているのではないのです、身体が気力的に起き上がれなくなるのです。
本当に自分がどうなってしまったのかと思うほどに酷い状態でした、それが半年ほど続いたと思います、その後は突然のように元に戻りバリバリ仕事をこなせるようになりました。
こんな症状が経営歴40年で3回ほどあります、最も長い時では1年以上というのも記憶しています。
こんな時期に社員が頑張ってくれて経営的には特に大きなトラブルにもならずに済んだのは幸いでした、この時ほど社員のありがたみを感じたことはありません。
ところで、この突然の「ぷっつん症候群」とはいったい何なのでしょう?
会社員時代には一切なかったことなのに会社を離れた瞬間に経験するようになります、経営上やお付き合いでの過去経験した事のないほどの緊張感、避けて通れない各種の重圧、そんなストレスが知らないうちに溜まっているのかもしれません。
脳は無意識の領域で心身に危険を感じると危機回避の目的で表面思考を止めてしまうことがあります、つまりこれは脳が正常に機能している証拠でもあるのです。
これを無理して頑張ると本当に危険な状態になるのかもしれません、経営者だって人の子です自然の摂理と本能に従うことも大事なことだと思います。
最近では新型うつとか現代うつとか呼ばれている症状によく似ています、まさにこれなのかもしれません。
そんなときは無理せずパートナーや社員に甘えて、きたるべき天の時までじっくり心身を休ませるに限ります。
こういうときなのです、パートナーや社員のありがたみを知るときは、だから経営者は孤軍奮闘してはいけないのです。
正常なる経営の為に、幸せな人生を送るために、自身が動けないときに頼りになる社員や仲間を動けるうちにたくさん作っておくことが肝要です。
経営者は気が休まることがありません、どこかでリフレッシュしなければ新しいアイデアの苦境を乗り切る方法も考え出せなくなります。
そこで一つのリフレッシュ方法の提案です、私はよく節目を使います、節目を都合よく解釈して有益に活用しているのです。
なかなか纏まらない商談が発生した場合など「今月は流して来月決めにかかろう」とか、状況変化の「きっかけにする」と言うか一種の気分転換を行います。
面倒な事の先送りということにもなりますが、取り合えず落ち着く為の精神的なリセットになると考えています。
それによって疲れた頭を一旦リフレッシュするのです、その効果は絶大かと思います。
一つの物事に拘って集中しすぎると考えがどんどん狭くなります、そこで来月から再起動するという大義名分を作って一休みするのです。
そうすることによって第三者的に冷静に今の状況や問題が見えてくるようになります。
節目は何でも良いのです、日・週・月・年・期など都合よい時期を選べばよいのです、この先が善くなることであれば「自己都合」も悪いことではありません。
経営者人生を歩みはじめてからというもの普通ではできないような様々な経験をしてきました、楽しい思い出もありますが明確に記憶しているのが辛い時の心理状態です。
その中でも、理由も解らず一瞬にして崩れ落ちるような強い感覚は忘れようもなく何年経っても夢に出てくることもあります、その度に気を引き締めて過ちがあれば軌道修正できるようになります。
人生も経営も転げ落ちるときは一瞬にして落ちます、数年かけて築き上げてきたものが一夜にして綺麗に蒸発するのです。
多くのこうした転げ落ちる瞬間を経験すると些細な事実から予感のようなものが走ることがあります、こういうときは決して言葉には出さずに行動しないことに徹するようになりました。
転げ落ちる原因はほんの些細な事からなのです、自ら流れを変えてしまう様な軽率な一言であったり敵対してはいけない相手に感情論での敵対行動をとったり、今となって考えれば何とも大人げないと反省しきりです。
私の若いころと同じように、その後に起こる事を考えずに妙な拘りやプライドを優先し感情的な言動や振舞いを行う経営者は少なくありません。
その後の状況は手に取るように明確に解ります、でもあえて言うことはしません、自身の身をもって経験するのが一番の反省であり活きた経験になるからです。
何度も言いますが崩れ落ちるときは一瞬です、あまりに見事過ぎて笑いさえも出るときもあるほどです。
その後の地獄のような状況は悲惨です、数年かけて築き上げたものが一夜でゼロになり復活させるのには10年かかります。
百戦錬磨の経験者は無闇に流れを変えるような軽率な行動は絶対に行わないものです、もしも行うときにはその相手との関係の全てを終わらせるときだけです、それも巨大な破壊力で一瞬で終わらせます。
「落ちるは一瞬、復活は極めて長し」、どうか頭の隅にでも置いておいていただければ幸いです。
人間とは、期待していたことがなかなかその通りにならないと充分に幸せな状況下でも落ち込みます。
ビジネスでは商談の大幅な規模縮小や銀行融資の減額などは、ある意味では一応の達成をしているので悪い状況ではないのですが何故か手放しでは喜べなかったりします。
ところで、どうして良いことが起きているにも関わらず何となく不安や不満を感じたりするのでしょうか。
よく考えてみるとその要因の全てが自分にあったりします、行動のまずさとかミスではないのです、完璧にやっても同じことです。
要因はたった一つで自分の「過度なる期待感」です、商談の内容、相手の笑顔、飲食での話し振りなどで自分が相手の考えている以上の期待を持ってしまったのではないでしょうか。
相手が当所の内容より結論が変わってきても、それは相手の都合や全体のバランスを考えてのことであるかもしれません。
物事は自分の思うように行かないのが普通です、まあ押し並べて9割以上がそうです。
ビジネスもプライベートも生きていれば身の回りに起きること全てが相手有ってのことで、自分が勝手に決められる物は何一つないのです。
何事にも過度の期待は捨てて自分が後悔のないように精一杯頑張る、後は朗報を待つくらいの余裕で構えていましょう。
「水は流れ流れて落ち着く処に落ち着く」、「物事収まる時に何もしなくても収まる」、これ自然の摂理です、そして物事全て人生もまた同様に。
双方の見解に食い違いが出て自身の行動を咎められると「家族を守るため」とか「社員を守るため」と、あたかも自身の行動が誤っていたとしても致し方ない事であると正当性を主張し、それを理解し認めてもらおうと努めます。
これは結果的に思惑とは裏腹に解決に向け良い方向へ動くどころか、どこまでも平行線となる結果となります。
何故かと言うと「守るべきもの」を主張するのであれば、それは誰にでも「守るべきもの」が存在しているからです、実に簡単な理論なのです。
つまり、あなたの「守るべきもの」を守ろうとすると私の「守るべきもの」が守れなくなる、これは理屈としておかしいことになります。
普通に考えれば当然のことですが、保身でついそれを口にしてしまうのが経営者マインドが低いという証拠でもあるのです。
経営経験が豊富で自信があれば世間や他者を理由にした言いわけは持ち出しません、それが何の意味もないどころかむしろ逆効果になることを解っているからです。
経営者とはどのような状況であれ自分の行動原因による結果であるという責任を担っているのです、自分の行動原因によって都合悪い状況を作っておいて持ち出された家族や社員が聞いたらどう思うでしょうか。
少なくても自分たちが守られているとは決して思いません、場合によっては「他者のせいにしてかっこ悪い」と思うかもしれません。
本当に家族をそして社員を守りたいのであれば、自身の過ちを認めずに正当性だけを認めてもらおうとする姿勢や他者を引き合いに出してでも自身の行いを正当化しようとするプライドを捨てることです。
プライドをかなぐり捨てて「私が間違っていました、本当にすみません」、この一言で大切なものを守れる可能性は飛躍的に高くなるのです。
「家族を守るため」、「社員を守るため」と口では言いながら、本心は経営には何の有益にはならず過ちを認めないという自身のプライドを守っているに過ぎないのです。
「守ろうと思えば守れない」、本当に大切なものを守るとはどういうことなのか、経営者として成功したいのであれば冷静にそして真摯に考えてほしいものです。