窮地に陥っている会社には必ず兆候が現れるようです、危険な兆候を幾つか上げてみましょう。
・社長となかなか連絡が取れない
何度留守電を入れてもメールしても返事は一切なし、緊急の資金調達やら取引先への対応でてんてこ舞いなのでしょう。
・幹部社員や経理担当が退社する
正常な退社なら取引先などに挨拶するはずです、それが突然の退社となると穏やかではありません。
給与未払いや経営陣との関係悪化に陥っていると推測できます。
・社長の付き合いが悪くなる
飲食の誘いに快く応じていた人が突然断られることが多くなったら要注意です、資金繰り悪化は確実に経営者の行動にブレーキをかけてしまうようです。
以上はほんの基本的事項ですが、これらのうち1つでも該当すれば充分に危機的状況にあると見ても間違いはないでしょう。
同時多発的に発祥する悪い噂や社長の付き合う人脈がコロコロ変わるなど、大小の変化は必ずその裏に何か根本的な問題が潜んでいます。
上手くいっているときは経営者は常に穏やかなのです、変化が起きているということは危機的状況を疑った方がよいかもしれません。
逆説的に言うと、どんなに境地に陥っていても何時も通りの行動を心がけることが肝要です、取引先に危機的状況を察知されれば更なる状況悪化は免れません。
私の家の近所にはほんの10年前まで賑やかだった老舗店舗が並ぶ商店街があります、今では駅の反対側に人を奪われバブル期に栄華を誇った商店街全体が閑古鳥が鳴いています。
人が奪われるというのは理由の一つで、商店街全体のオーナー年齢が70歳を超えており商店街全体の活力が一気に落ちてしまったのが大きな要因だと思います。
私がよく買っていた靴屋も紳士服屋も後継者がいなくて廃業に追い込まれました、このような後継者問題は今後日本各地で本格化してきます。
一方で資金不足から飲食店やアパレルショップをオープンしたくてもできない若者が存在しています、お金と店舗さえあればすぐにでも事業化できます。
そこで、後継者を探している人とすぐ始められるお店を探している人を対象に、出会いの場と事業承継に必要なノウハウを教えるコンサルタント兼エージェントが存在しています。
今では私もその一人で、きっかけは20年ほど前に行きつけのバーのオーナーの悩みを解消してあげた事でした。
私が若い頃から通っていた老舗のショットバー、当時マスターから近々閉店すると聞いて酔った勢いで「もったいない若い人に譲ったら?」と言ってしまったのがきっかけでした。
その数日後に寄ると、店を引き継ぎさせたいというバーテンダーが来ていたので間に入って条件などを決めて契約書を作成してあげました。
その後、互いが納得する形で引き継ぎマスターも一時金が得られるうえに店舗をスケルトンにして返却する費用も解消しご満悦、双方ハッピーな事業承継ができたというわけです。
後継者を探す人とお金が無いけど事業を行いたい人が双方ハッピーになれるなら大変喜ばしいことです、更には個人取引ですから当事者同士が納得すれば特に法的な問題はありません、双方の主張を覚書にまとめて捺印すれば終わります。
後継者不在の中小企業は60%以上存在していると言われて久しいです、隠居を考えるようになったら綺麗に清算して憂いの無い状態で隠居して欲しいものです、多少の費用は掛かりますがその道のプロに先ずは相談してみましょう。
一人で考えていることと実際とは雲泥の差があります、一般的には知られていない各種の解決方法があるのです。
「行雲流水(こううんりゅうすい)」とは雲や水が自然に任せて流れていくが如く、自分の拘りや意思を捨て自然の流れに身を任せることをいいます。
多くの成功者を観てきて思うのが「行雲流水」の4文字です、成功したことがない人の特徴は常に自分の価値の無いプライドを捨てられずに、限界を越えた無理なことを一人頑張っていることです。
成功を何度となく収めている人は、時々の流れで最良の判断を行い最適な施策を瞬時に繰り広げます。
時には数年もかけ莫大な開発費を使って構築したシステムを一度も稼働させずに作り直す判断も躊躇いません、それよりもそのまま稼動させた後の方がトータル的な損失が大きいことを水際で計算できるからです、そこに何らの拘りもありません。
こういったその時々での瞬時の判断や施策を観て「方針がぶれている」と言う人もいます、ここで熟考して欲しいのです、「方針と施策は別次元」のものだということを。
成功している人は他者が何を思おうが関係ありません、その時に最善の方法を見い出し過去に囚われることなく瞬時に有益な施策を実行します。
そして大きな方針(ゴール)だけはぶれることはありません、ぶれるとしたらその時々の判断と施策であって方針ではありません、この施策と方針を混同していては正しくその人の経営手腕や実力を測ることは不可能です。
ヨットの覇者は潮の流れや風の方向を正確に読んで舵を切りバランスを取りながら最良のコースでゴールを目指します、つまりゴールは同じでもその過程は潮の流れや風の方向により進路や操縦方法が常に異なるのです、経営はこれとまったく同じです。
ヨットでの舵を切りバランスを取ることをコロコロ方針を変えると言うでしょうか、経営もヨットの操縦と同じです、ただし見えない思考の中に在る事項ということだけが異なります。
多くの人は見えている事象だけは理解できても、見えない事情を正確に理解することができません、まして自身で事業を興したこともない人の評価なら論外です、見えない事情を正確に理解できる者同士は他者の見えない判断や施策を正確に評価することができます。
「行雲流水の悟り」、これを心得ている人は本当に手強い相手と感じます、こういう人とのビジネスは経営歴40年の私でも程良い緊張感が全身に走ります、表面での作り言葉や都合良い提案などは全て見透かされます。
更にはビジネスに何の意味も持たないプライドや拘りなど一瞬で吹き飛ばされてしまうでしょう、そして双方が正直ベースに本当に真剣勝負を愉しんでビジネスを行うことができる相手だと感じ合えるのです。
こういったビジネス感覚が成熟した人との出会いが、私的にはビジネスで最良の出会いであり本当のパートナーだと感じるのです。
問題が大きければ大きいほど互いに切磋琢磨して乗り越えていく、その先に大きな達成感と関係者全員が大小の利益を得るのです。
経済学や経営学において、しばしば「イノベーションジレンマ」という言葉が登場します、このイノベーションジレンマとは改革をしなくてはいけないと解っていてもできない状況を指しています。
多くは大企業がその状況に陥ります、そしてその明確な理由も存在しています。
一つは、組織が大きすぎて末端まで浸透させるのに多くの時間とコストがかかってしまうからです。
この予算をどうやってひねり出すか、余裕の無い中では経営者が解っていてもなかなか実行できない理由がここにあります。
もう一つは、既存のサービスや業務フローが確立されており、これを壊すという行為が精神的に大きなストレスを生みます。
コンサルティングで多い質問が「既存のシステムと連動できるか?」、「既存のシステムからどうやって移行するのか?」が大半を占めます。
私は秩序が変わるとき一旦は生まれ変わる必要があると考えています、したがって旧来のシステムとしばらく併用させ、来たる時期に完全移行することが最良の方法だと思います、古い体質にしがみついていては新しいものが誕生し成長することは難しいでしょう。
よく例えられるのが「恐竜の絶滅」です、地球環境に大変動が起きたとき恐竜は対応できずに絶滅しました、方や小動物は新たな環境に適応するように進化を遂げて生き延びました。
現在あらゆる業界で新たなる秩序が生まれようとしています、それがデジタルトランスフォーメーションであり、これらの先に在るAIと結びついた未来形のIT技術です。
これらのIT技術革命はこれまでにない大きな地殻変動となります、アナログから完全デジタル時代への移行、どの業界もこの地殻変動に進化を遂げなければ生きてはいけません。
今後あらゆる業界で新たなる秩序が生まれます、そしてその中で淘汰されていく企業が後を絶たないでしょう。
変化するときに変化する、これができなかった企業は当然のこと淘汰されていくのです。
また企業のみならず人もまた大きく変化していかなくてはいけません、時代に合わせて変化を遂げて進化していく企業も人も生き残り未来において繁栄していくのです。
私は不動産に何かと縁があるようで不動産業に多くの知人友人がいます、その中でも昔から知っている不動産会社は以前は社員数名の印刷機械の販社だったそうです。
ところがひょんなことで不動産業にシフトしたのです、そのきっかけはお客さんの不動産を売却する際に買い手を探してあげたことが始まりだと言います。
買い手を探してあげただけなのに当時の会社の半年分ほどの利益に相当するお礼を頂いたと言うのです、なんとその売却額は10億円以上だったといいます。
もし不動産業であれば売り手買い手からの手数料は6000万円にもなります、この瞬間に不動産業にシフトしようと決めたのだそうです。
設立時の事業を10年以上続けている企業は統計では3%以下です、ほとんどの会社は何かのタイミングで事業を変更していきます、当社も設立来40年間で2回も定款を変更するほどの大きな事業変革を行いました。
会社も時代や世の中のニーズに合わせて変化させていくこと、これも生き残るためには重要な経営者の経営活動の一つです。
変化を拒んで淘汰されるよりも変化させて力強く成長していく会社の方が世間の評価は高く、また経営者はその潔さが立派だと評価されます。
企業の評価は何をしているかなどはどうでもよいのです、それは経営者の拘りや意地でしかありません。
それよりも従業員を雇用して利益を出して納税する、これが真の企業が考えなくてはならない社会貢献というものです。
少なくても利益も出ない事業を長く継続させていくことが企業の価値ではありません、収益事業を作り常に利益活動を継続させていくことが真の企業存続価値なのです。