中小企業のための補助金・助成金(9)
補助事業完了後も終わりではない
実績報告書や各商標(注文書、請求書等)を提出し入金まで終わったら補助事業は完了です。ですがその後もやらなければならないことは有ります。行った補助事業のその後を報告する義務が5年間あります。
なぜそんな義務があるのでしょう。そもそも税金で行った事業なので利益が出たら返す必要があります。補助いただいたのに利益が出ても自社だけのものというものは通りません。もちろん利益が出なかったりまだまだ開発する要素があって利益化できないのであれば返金する必要はありませんが、利益が出たのなら返金しなければなりません。それらの状況を確認するために報告を行うのです。
ただ、そんなにうまくいく事業は多くありません。そこで補助金を出す組織は、例えば中小企業庁であれば、雇用を増やしたり、現在であれば給与を増やすことを要求したりしています。それらが守られているかのチェックも含まれます。また補助事業で購入した装置も補助事業以外の仕様は禁止されています。特にサーバーやPCなど汎用性が高いものは注意が必要です。
補助金は税金がもとになっていますのでいろいろな制約が付きますが、それでも事業を推進するにあたって非常に有用な制度なのでぜひ利用していただきたいです。
中小企業のための補助金・助成金(8)
完了検査から入金まで
補助金の採択され交付申請が通り交付が決定したらいよいよ事業の開始です。しかし補助金はここからが本番です、事業をやりきる必要があります。補助事業の完了は、実績報告書と各商標などを提出し完了検査を通過する必要があります。
完了検査は補助金によって一部変わりますがほぼ同じです。補助金をもらうためには支払った各商標が必要となります。ここでその補助金の手引きをよく読み込んでおく必要があります。例えばよく問題となるのはWeb注文で購入する場合です。一般的な取引でだと「見積書」「注文書」「納品書」「請求書」が発生します。これでも足りないのですが、Web注文ですと見積書や注文書が無かったりしますので、それらのエビデンスとなるものをとっておかなければなりません。Web注文の場合は主に画面のスクリーンショットを保存するかメールで通知されるものを控えますが、画面のスクリーンショットを取り合忘れると大変です。不安な場合は各画面のスクリーンショットをとっておくとよいでしょう。
また一般的な取引をしたとしても「注文請書」が無かったりします。また「支払いの商標」も銀行振り込みでなくカード決済だった場合は「領収書」などを取得する必要があります。これらも手引きを読み込んで抜けが無い様にしなければなりません。一つでも商標が抜けるとその項目に対して補助金対象外になってしまいます。商標のエビデンスは非常に重要なので注意を払っておきましょう。
完了検査は電子申請の場合だと現地検査が省略される場合がありますが、場合によっては現地検査が実施されます。現地検査は現場に検査官がやってきて、開発物や納品物、そして商標を一枚一枚確認していきます。ここではすぐ商標を出せるようにファイリングしておく必要があります。現地検査は以前は必須だったのですが採択数が多い補助金などは最近は省略される傾向がありますので、少し楽になっています。ただ、不正が疑われている場合は最悪会計検査院がやってきますのでそうならないように補助金関連の取り扱いは厳重注意が必要です。
完了検査が終われば通常は1か月程度で入金されます。採択数が多い補助金によってはもう少し時間がかかることがありますが、最近は3週間くらいで入金されるようになっています。入金が確認できれば補助金は完了となります。ただし、5年間は報告義務があるので作業はまだ続きます。
中小企業のための補助金・助成金(7)
電子申請
最近実施される補助金は電子申請が多いです。電子申請だと事務局側も大量の書類を管理しなくて済みますし、申請側も大変楽になります。締め切りの消印とか気にしなくてよくなりました。中小企業庁の補助金だといまはGビズIDが共通ログインとして使用されています。GビズIDは申請に少し時間がかかるので補助金申請を考えている方は早めに取得されたほうが良いでしょう。
電子申請では記録が残りそれがいつでも閲覧できるので便利です。申請した日時も記録されますし、その旨もメールで通知されますから正確に申請できたことがわかります。また申請後においても差し戻し処理が全て記録されますので、対応し忘れなどが無くなります。各資料も電子データで添付する形になりますので、印刷してファイリングする手間が省けるのが非常に助かります。
ただし、すべてが電子上のデータで出来るわけではありません。商標などは通常通り紙面で行っているものをあると思います。それらはPDFにして添付する必要があります。すべての商標を電子化しなければならないので、特に契約書が発生しているときは少し不便さがあるかもしれません。また申請サイトにログインする場合は多要素認証として携帯電話へのSMS送信であったり、GビズIDであれば専用アプリケーションによる認証が発生します。小さな企業でしたら申請者が管理することもできますが、そこそこ大きな企業ですとその認証を誰が行うかの問題も生じます。
電子申請は大変便利ではありますが、新たに労力がかかることもあります。とはいえ、申請や事業完了後の処理などは格段に便利になっていますので、これからも便利な方法へ発展していっていただければと思います。
中小企業のための補助金・助成金(6)
誰が審査しているのか
補助金のなかで特に中小企業庁がおこなっているものづくり補助金など多くの企業が採択されるものがあります。最近では第〇次という形で年に何度も申請機会があります。こういった補助金では審査の数も膨大になります。いったいどこで誰が審査しているのでしょうか。申請をするにあたり誰が見るのかは重要な情報になってきます。
こういった補助金はまず取り扱う事務局が選ばれます。そのあとで補助金が公募されるのですが、実際に審査をするのはその事務局ではなく外部の委託された審査官たちです。その審査官とは主に中小企業診断士や税理士などです。その方たちが大量の申請をさばいていくことになります。
審査する数は膨大なので当然審査する時間も短くなってきます。申請する側は自分たちの理念や想いを載せて隅々まで詰め込んで申請書を書くわけですが、それらが全て審査員に読み取られるわけではありません。審査する方は自身で事業を生み出して経営されていた方もいるとは思いますが、そのような方は少ないとみておいた方が良いです。審査には公開されている審査項目がありますので、そこに合致するかどうかを機械的に見ていくことが多くなってくるようです。
よって申請書には審査項目に合致することをわかりやすくアピールすることが重要になってきており、審査しやすい申請書が通りやすくなっているようです。補助金によっては不採択だった場合にその理由を聞くことが出来ます。それらの理由をみて再度改善して申請に臨むことが出来ますので、わかり訳すく審査官にアピールできると採択への道は近づいてきます。
中小企業のための補助金・助成金(5)
発注先を決めるには
近年補助金は設備投資を促すものが多くなっています。設備といってもITなどのシステムへの投資も含まれます。機械装置などは既存の設備を購入する(カタログが必要)ことが求められますが、システムなら自由に作ったものを補助事業対象費に回すことが出来ます。
その機械装置やシステム構築費なども含めて発注する際には相見積もりを3社以上取ることが要求されます。普段発注している企業さんに頼んだ方がお互いわかっているので早いし楽なのですが補助金は税金なのでそう簡単には行きません。正当に発注先を選定する必要があります。
しかし、どうしてもこの企業に発注をしなければならないという状況は発生します。そういった場合は業者選定理由書というものを作ります。見積が1社以上に取れない状況であったり、その企業しかできないものであれば、その理由と発注する妥当性を示す資料を作ります。この業者選定理由書を通せば相見積もりで選定しなくても1社に発注することが出来ます。
最後に、補助金で購入した設備は補助金に関する事業でしか使用できないことになっていますので、そこはご注意を。