
中小企業のための補助金・助成金(1)
補助金は資金の先出しが発生する
補助金・助成金といえば「国からお金をもらえる」と思ってしまいがちです。実際そのような方を何人も見ていますが正しくは違います。補助金・助成金は行政の目的に沿っており、その効果が得られると想定される事業に対してその補助金の対象になる経費のうち定められた補助率・助成率を交付するというものであり、そのほとんどが精算払い(後払い)です。つまり、申請する事業の内うち一部経費を交付してもらえますが、受け取れるのは全ての経費を支払った後になるので一旦事業経費を全て負担しなければならないのです。
補助金と助成金の明確な違いはありませんが、中小企業が受けられる補助金・助成金では、
中小企業向け補助金 ・・・ 補助率 2/3
中小企業向け助成金 ・・・ 助成率 1/2
というのをよく見かけます。補助率2/3というのは、補助金1,000万円の場合は自社で先に1,500万円を使わなければならないのです。助成率1/2なら、2,000円最初に使う必要があります。そしてその経費資料等を審査し問題ないとされた経費に対してだけ補助金・助成金が支払われます。つまり補助金・助成金は、最初にお金がなければ出来ないのです。したがって、お金がもらえるというわけではないのです。
これは、行政の目的が経済を回すことにあるためです。一部を負担して、国内の経済循環を良くしようという意図があります。特に最近は設備投資を促すものが多くあります。補助金・助成金は税金から成り立っているものが多いので、その税金を使って事業をするのですから採択された企業もタダでやるわけにはいきません。やはりある程度の資金は支出しなければならないのです。
ただし、最初に事業資金が無いから補助金・助成金を申請したいのだということはわかっているので、多くが「つなぎ融資」というものを用意しています。採択された場合に補助事業・助成事業に対して融資が得られるというものです。これがあるから事業を遂行していけます。つまり補助金・助成金とは、基本的には「申請をして採択されたなら融資を得て事業を行い、その一部を負担してもらえる。」というものなのです。

中小企業のための補助金・助成金(10)
補助金が公募される時期
補助金は公募される時期がだいたい決まっています。例えば中小企業庁などの補助金では国家予算に流れがありますから、その流れに沿って経緯を見守ることができます。おおよそ夏くらいに概算要求が各省庁から財務省に出されます。そこでどんな補助金が計画されているかがわかります。財務省を通過して予算案が出来上がるのが12月頃です。その後、国会にて予算が承認され1,2月頃に補助金の事務局が公募されます。事務局が決まればその後は2,3月に補助金公募が開始されます。この場合は補正予算の補助金ですね。通常の補助金5月頃に公募開始されます。
また上記以外に年に何回も公募されているものもあります。ものづくり補助金や事業再構築補助金などですね。こういった補助金は公募→締切→採択流れで、3~4か月ごとに繰り返し公募されています。比較的複数年同じ補助金が予算化されているものもあれば単年度で終わるものもあります。同じ補助金が来年もあるとは限りません。狙っている補助金があるならば早めの段階で公募できるように準備しておきましょう。
補助金は政治の流れに大きく影響をうけます。いまなら所得倍増を掲げているのでそれを満たすような企業が採択されます。特に12月~1月は政治・国会の状況を観察しておくと次に出てくる補助金を把握しやすくなります。

中小企業のための補助金・助成金(9)
補助事業完了後も終わりではない
実績報告書や各商標(注文書、請求書等)を提出し入金まで終わったら補助事業は完了です。ですがその後もやらなければならないことは有ります。行った補助事業のその後を報告する義務が5年間あります。
なぜそんな義務があるのでしょう。そもそも税金で行った事業なので利益が出たら返す必要があります。補助いただいたのに利益が出ても自社だけのものというものは通りません。もちろん利益が出なかったりまだまだ開発する要素があって利益化できないのであれば返金する必要はありませんが、利益が出たのなら返金しなければなりません。それらの状況を確認するために報告を行うのです。
ただ、そんなにうまくいく事業は多くありません。そこで補助金を出す組織は、例えば中小企業庁であれば、雇用を増やしたり、現在であれば給与を増やすことを要求したりしています。それらが守られているかのチェックも含まれます。また補助事業で購入した装置も補助事業以外の仕様は禁止されています。特にサーバーやPCなど汎用性が高いものは注意が必要です。
補助金は税金がもとになっていますのでいろいろな制約が付きますが、それでも事業を推進するにあたって非常に有用な制度なのでぜひ利用していただきたいです。

中小企業のための補助金・助成金(8)
完了検査から入金まで
補助金の採択され交付申請が通り交付が決定したらいよいよ事業の開始です。しかし補助金はここからが本番です、事業をやりきる必要があります。補助事業の完了は、実績報告書と各商標などを提出し完了検査を通過する必要があります。
完了検査は補助金によって一部変わりますがほぼ同じです。補助金をもらうためには支払った各商標が必要となります。ここでその補助金の手引きをよく読み込んでおく必要があります。例えばよく問題となるのはWeb注文で購入する場合です。一般的な取引でだと「見積書」「注文書」「納品書」「請求書」が発生します。これでも足りないのですが、Web注文ですと見積書や注文書が無かったりしますので、それらのエビデンスとなるものをとっておかなければなりません。Web注文の場合は主に画面のスクリーンショットを保存するかメールで通知されるものを控えますが、画面のスクリーンショットを取り合忘れると大変です。不安な場合は各画面のスクリーンショットをとっておくとよいでしょう。
また一般的な取引をしたとしても「注文請書」が無かったりします。また「支払いの商標」も銀行振り込みでなくカード決済だった場合は「領収書」などを取得する必要があります。これらも手引きを読み込んで抜けが無い様にしなければなりません。一つでも商標が抜けるとその項目に対して補助金対象外になってしまいます。商標のエビデンスは非常に重要なので注意を払っておきましょう。
完了検査は電子申請の場合だと現地検査が省略される場合がありますが、場合によっては現地検査が実施されます。現地検査は現場に検査官がやってきて、開発物や納品物、そして商標を一枚一枚確認していきます。ここではすぐ商標を出せるようにファイリングしておく必要があります。現地検査は以前は必須だったのですが採択数が多い補助金などは最近は省略される傾向がありますので、少し楽になっています。ただ、不正が疑われている場合は最悪会計検査院がやってきますのでそうならないように補助金関連の取り扱いは厳重注意が必要です。
完了検査が終われば通常は1か月程度で入金されます。採択数が多い補助金によってはもう少し時間がかかることがありますが、最近は3週間くらいで入金されるようになっています。入金が確認できれば補助金は完了となります。ただし、5年間は報告義務があるので作業はまだ続きます。

中小企業のための補助金・助成金(7)
電子申請
最近実施される補助金は電子申請が多いです。電子申請だと事務局側も大量の書類を管理しなくて済みますし、申請側も大変楽になります。締め切りの消印とか気にしなくてよくなりました。中小企業庁の補助金だといまはGビズIDが共通ログインとして使用されています。GビズIDは申請に少し時間がかかるので補助金申請を考えている方は早めに取得されたほうが良いでしょう。
電子申請では記録が残りそれがいつでも閲覧できるので便利です。申請した日時も記録されますし、その旨もメールで通知されますから正確に申請できたことがわかります。また申請後においても差し戻し処理が全て記録されますので、対応し忘れなどが無くなります。各資料も電子データで添付する形になりますので、印刷してファイリングする手間が省けるのが非常に助かります。
ただし、すべてが電子上のデータで出来るわけではありません。商標などは通常通り紙面で行っているものをあると思います。それらはPDFにして添付する必要があります。すべての商標を電子化しなければならないので、特に契約書が発生しているときは少し不便さがあるかもしれません。また申請サイトにログインする場合は多要素認証として携帯電話へのSMS送信であったり、GビズIDであれば専用アプリケーションによる認証が発生します。小さな企業でしたら申請者が管理することもできますが、そこそこ大きな企業ですとその認証を誰が行うかの問題も生じます。
電子申請は大変便利ではありますが、新たに労力がかかることもあります。とはいえ、申請や事業完了後の処理などは格段に便利になっていますので、これからも便利な方法へ発展していっていただければと思います。