
中小企業のための補助金・助成金(6)
誰が審査しているのか
補助金のなかで特に中小企業庁がおこなっているものづくり補助金など多くの企業が採択されるものがあります。最近では第〇次という形で年に何度も申請機会があります。こういった補助金では審査の数も膨大になります。いったいどこで誰が審査しているのでしょうか。申請をするにあたり誰が見るのかは重要な情報になってきます。
こういった補助金はまず取り扱う事務局が選ばれます。そのあとで補助金が公募されるのですが、実際に審査をするのはその事務局ではなく外部の委託された審査官たちです。その審査官とは主に中小企業診断士や税理士などです。その方たちが大量の申請をさばいていくことになります。
審査する数は膨大なので当然審査する時間も短くなってきます。申請する側は自分たちの理念や想いを載せて隅々まで詰め込んで申請書を書くわけですが、それらが全て審査員に読み取られるわけではありません。審査する方は自身で事業を生み出して経営されていた方もいるとは思いますが、そのような方は少ないとみておいた方が良いです。審査には公開されている審査項目がありますので、そこに合致するかどうかを機械的に見ていくことが多くなってくるようです。
よって申請書には審査項目に合致することをわかりやすくアピールすることが重要になってきており、審査しやすい申請書が通りやすくなっているようです。補助金によっては不採択だった場合にその理由を聞くことが出来ます。それらの理由をみて再度改善して申請に臨むことが出来ますので、わかり訳すく審査官にアピールできると採択への道は近づいてきます。

中小企業のための補助金・助成金(5)
発注先を決めるには
近年補助金は設備投資を促すものが多くなっています。設備といってもITなどのシステムへの投資も含まれます。機械装置などは既存の設備を購入する(カタログが必要)ことが求められますが、システムなら自由に作ったものを補助事業対象費に回すことが出来ます。
その機械装置やシステム構築費なども含めて発注する際には相見積もりを3社以上取ることが要求されます。普段発注している企業さんに頼んだ方がお互いわかっているので早いし楽なのですが補助金は税金なのでそう簡単には行きません。正当に発注先を選定する必要があります。
しかし、どうしてもこの企業に発注をしなければならないという状況は発生します。そういった場合は業者選定理由書というものを作ります。見積が1社以上に取れない状況であったり、その企業しかできないものであれば、その理由と発注する妥当性を示す資料を作ります。この業者選定理由書を通せば相見積もりで選定しなくても1社に発注することが出来ます。
最後に、補助金で購入した設備は補助金に関する事業でしか使用できないことになっていますので、そこはご注意を。

中小企業のための補助金・助成金(4)
採択されればOKという訳ではない
補助金は申請にかなり労力を使います。そして厳しい倍率を勝ち抜き見事採択されたとしても、そこで安心できるわけではありません。補助金の種類にもよりますが、例えば中小企業庁の補助金である「ものづくり補助金」では、採択された後に予算の修正など交付申請というものがあります。これに3か月くらいかかってしまう企業もあります。予算の根拠や、人件費の算出根拠など、色々と提出するものがあります。
また、事業を開始してからも各種のチェックがあります、事業期間が長いと中間検査というものが入ります。中間で事業の進捗報告や支払いに対するエビデンスの確認、人件費に関する業務日報の確認などが入ってきます。随時補助金の担当者と連絡を取り、確認を取って進めていると非常に楽に検査を完了することが出来ます。
補助金や助成金には決まった処理の仕方が存在します。少しでもそこからズレた処理になると補助事業の対象外になり、その分の補助金が下りないことがあります。初めて補助金を採択された企業によく見られます。
最後に、完了検査があります。事業経緯を報告する成果報告書やこれまでの支払いに対するエビデンスなど、すべての資料に対してチェックが入ります。ここで資料をすべてそろえなければ、補助金が減らされる可能性があります。補助金や助成金は税金で運営されているものが多いので、少しのミスも許されません。特に支払いに対するエビデンスには、処理の仕方を手引き通りに行わなければなりません。もちろん数字が少しでも違うと、差し戻しを食らいます。
完了検査を無事通過し担当事務局内でのさらなる審査を通過すれば、ようやく補助金が下りることになります。採択された後も数々の書類整備をしていって、補助金をもらうことが出来るのです。

中小企業のための補助金・助成金(3)
補助金には"流れ"がある
補助金や助成金には、"流れ"が存在しているものあります。例えば、東京都中小企業振興公社さんの助成金をれにすると創業から製品開発・導入・知財までたくさんの助成金があります。これらから一つ選んで申請するのもよいのですが、開発の経過毎に申請していく方が採択率が上がってきます。例えばこのような順番です。
①製品開発着手支援助成事業
②外国特許出願費用助成事業
③新製品・新技術開発助成事業
④市場開拓助成事業
アイディアの初期から製品を市場に投入するまでを、助成金を活用して行うことが出来ます。特に、②③の連携はおすすめです。一番取りたい助成金はやはり、③の開発助成です。これを取るためにも、事前段階から助成金を絡めていくというのが一つの手です。ただ、デメリットもあります、残念ながらスピードを要する開発には適しません。
このように開発の流れに沿って、助成金の流れも存在しています。補助金や助成金を活用するには、初期の段階から検討しておくことをお勧めいたします。

中小企業のための補助金・助成金(2)
補助金は減らされることもある
私は独立前にいくつかの企業に属し補助金・助成金申請を行っていました。基本的に小さな会社ばかりでしたので開発業務も兼任です。申請では技術説明とマーケティングと事業計画書を作り、実際採択されてからは開発業務をこなして各経費書類を相手企業と交渉して作り、最後には経費のエビデンスとして人件費(最近は人件費は出ないのですが)に関する作業日報やら成果報告書を作成し担当者さんに申請し何度も何度も修正を繰り返しながらようやく補助金が交付されるという感じでした。
中小企業では当たり前の光景かもしれませんがこれが非常に大変なのです。人に任せれるところは任せて開発業務に専念した方が確実に良いです。
私は過去、数百万円から数千万円の補助金を自社だけであったり、いくつかの企業を連携させたコンソーシアムなどで申請し裏方に徹しながらまとめて来ました。しかし裏には大きな失敗があります。この経験があったから補助金・助成金に対しては思い入れがあるのかもしれません。
私があるベンチャー企業にいた頃、助成限度額が1,500万円で助成率が1/2の助成金を申請し採択を得ました。しかし助成限度額が1,500万円ということは先に3,000万円使わなければならないということです。当然、事前にそんな資金があるはずがないですから助成金の採択結果をもって融資を得るという計画で行っていました。事業の業績は芳しくありませんでしたが、何とか申請は採択されるに至って非常に喜んでいたのもつかの間、すべての金融機関から融資を断られてしまったのです。
今思えばですが、その私が属していた企業がブラックになっていたんですね。助成金審査もそこまで見抜けなかったのでしょう。融資が得られないのでその開発は難航を極め、ほとんど実践できない状態でした。何とか資金を作り少しずつ開発を行っていくという感じです。補助金・助成金というのは実施期間が決められています。多くは半年~2年なのですがその助成金は2年でした。つまり、2年が経過してしまうとその事業の経費であっても助成金が得られないのです。実施計画の延長を申請しては、危機を感じ、資金調達と開発を続ける日々でした。
期間終了時には何とか駆け込みで700万円発注と納品を済ませ、予定されていた納品物を作り最終的に900万円の事業経費分だけでも助成金をもらおうと事業完了の手続きを開始しました。しかし、最終的に認められた助成事業額は200万円。助成金はたったの100万円でした。せっかく1,500万円の助成金をとったのに、100万円しかもらえなかったのです。
理由はこうです。まず、納品物が間に合ったので事業完了としては受け付けて頂けました。しかし最後の700万円が分割で後払いにしていたので、この分の経費が対象外となりました。支払いがどうしても間に合わなかったのです。よって事前に処理していた200万円分だけが助成対象とみなされ、その半額の100万円の交付に至ったのです。
中小企業にはよくある話だそうです。特に資金が無くて予定されている納品物を作ることが出来ず、事業自体を断念する企業が毎回あると伺いました。補助金や助成金は採っただけでは事業はできず、そして最後に減らされてしまう可能性もあるのです。せっかくのチャンスを活かせなず、何とも歯がゆい思いをしなければなりません。
まずは計画の段階で資金の手当てを付けておかなければ無駄な労力を使うことになります。最悪でも自社で資金を用意できる企業でなければ、補助事業の遂行自体も難しいものとなります。