2022年6月 7日 00:00
「浮足立つ」とは、足が地についていないような精神状態が不安定な様を言い現わした言葉ですが、解りやすく言うとパニック症状の一つだと言えます。
本来なら冷静に判断し落ち着いて出来ていたことがある日突然これが出来なくなり、何をやってもミスを連発し口から出る言葉も矛盾を生じ心ここに非ずの曖昧さを極めていきます。
私はこういった突然脳が劣化したような状況を「デグレード」と呼んでいますが、何故こういった現象が自分には無関係だと思っていた人に突然起こるのでしょうか?
デグレードを実際に経験すると、その状況下の自分は「完全に自分ではなかったようだ」と多くの人は後に語ります。
この時の思考や行動がまさに「浮足立つ」状況であり、信じられないようなミスを連発し「A」という文字が「B」にしか見えないという錯覚や錯視さえも起こるのです。
また銀行に行こうと出かけるのですが、気がつくと電車に乗っていたなんていう自分でも信じられない行動をとるようになります、しかもその後の頭の中の記憶では銀行に行ってきたことになっているのです。
さて、この「浮足立つ」症状ですが、人間だけではなくコンピューターにも起こると言ったらあなたは信じるでしょうか?
実は実際に起こるのです、その症状をIT業界では「ハングアップ」と呼び何かを処理しているようだけどキーボードをまったく受付ず画面も固まってしまいます。
また、ハードディスクが音を立てるほど異常な動作をし、場合によってはハードディスクからファイルが消えたりします。
この原因の多くはOSやアプリケーションの隠れたバグなのですが、たまたま2つ以上の事象の状態が不一致を起こして何を優先して処理するかの選択を繰り返すだけで解を導けずにCPUが暴走しているのです。
この現象が人間の脳にも起きていると考えると、「浮足立つ」状況の原因も特定できるようになります。
つまり、自身の思考の中に「YES(やる)」と「NO(やらない)」という2つの解があり、どちらも優先しようとして脳が何をして良いのかが解らなくなり暴走の末に停止、そこで身体は小脳だけで無意識の記憶に伴い勝手に動いてしまうということになるのです。
そして、取りあえずその場の目先の事を行うのですが、新たな行動により更に不一致状態に別の情報が入り込みパニック状態が加速していくのです。
コンピュータの場合は強制リセットすれば治ります、人間も一旦思考をリセットするのが正しい対処法だと思います、しばらく放心状態にして冷静さを取り戻し気持ちを新たに全てを仕切り直すのです。
これを中途半端に行うと更に酷い症状を引き起こす怖いリバウンドが生じます、数日間仕事のことなど何も考えずにお笑い番組のDVDでも借りてきて大いに笑って過ごしたらどうでしょうか?
これを毎週のように継続していれば、まあ数ヶ月もしないうちに普通の人ならパニック症状は自然に治まると思います。
こういう時に既婚者は辛いです、思考のリセットには一人の時間と空間が持てるかどうかが重要な鍵になります。
家族との時間は仕事のことを忘れられるように思えて実はそうはなりません、これは日常のルーティングと変わらず思考はリセットしないばかりか家族と仕事の優先順位の両天秤となり脳ストレスは蓄積されていくばかりになるのです。
「浮足立つ」というパニック症状は忍耐力が強い人ほど陥りやすい傾向にあります、何故なら忍耐力が弱い人はパニック症状を起こす前に「ぷっつん」によって小刻みにリセットしているからです。
一時的な感情行動を引き起こす「ぷっつん」は、極めて優れた自己防衛本能の一つなのかもしれません。
最後に、では何故脳のデグレードそしてその結果においてパニック症状は起きるのでしょうか?
その答えは、長年のルーティングにより脳は合理的な手抜き処理を行うように進化しています、そこに業務変化や環境変化によりこれまでのルーティング思考とは違う思考が必要になった際に、染み込んでいる手抜き処理思考が出す解と新たに思考する解との不一致が生じる為なのです。
年齢が高くなればなるほど応用が利かなくなるのが人間の常です、その理由はこういう長年の脳の合理化した手抜き処理の進化によって起こるのです、だから新しい事をやるときは真っ白な状態の無垢な脳の方が早期に適合しやすいのです。
転職の暗黙の了解である「年齢制限」、何事も理由と意味が存在しているのです。
ヘッドハンティングにより現役バリバリの即戦力と期待され折り紙付で入社、しかしその後はまったく鳴かず飛ばずで双方が失望するなんてことはビジネスシーンにおいて特段珍しいことではありません。
逆に何歳になっても次から次へと新規事にチャレンジできる人は、常に脳を柔軟且つ高速に機能させるようにルーティングを自身の環境から一切排除し常に別の事を並行して行い鍛え上げているのです。
曜日感覚や決められた時間の食事と就寝、規則正しい日常生活と金銭感覚、普通なら好ましい平和な状況のこれら全てが脳がルーティング思考に進化していく要因です、これを所謂「平和ボケ」や「幸福思考」と称しますが間違ってはいないと思います。
※「ぷっつん」とは、80年代に広く使われた言葉で抑圧された感情が何かをきっかけに糸が切れたように我慢の限界を越え感情表現を突然のように行う様を言います。