隠れたハイコストパフォーマンスな名アンプ~ビクター AX-S700
2020年11月 9日 12:00
80年代のハイブリッドICで構成された、ハイコストパフォーマンスアンプのビクターAX-S700(1986年発売、定価6.2万円)です。
接点磨きと内外装クリーニングのメンテナンスに出していて、他の80年代機種にだいぶ遅れての音質確認となりました。
流石にプロのメンテナンサーの仕事は私が道楽で行うのと違って、本当に新品同様になって戻ってくるので高いお金を払ってもコレクション品だけでも出しておきたいと思うのです。
どうでもいい話なのですが、メンテナンス上がりのアンプは温まってくるとクリーニング剤に含まれる芳香剤の香りがするので新鮮でなかなか爽やかな気持ちになるのです。
ビクター AX-S700
このビクターAX-S700は自重の半分もあろうかという巨大な電源トランスを採用し、オリジナルの電圧・電流変換増幅Gmドライバー回路でスピーカー駆動力を改善したプリメインアンプです。
Gmドライバー回路とは、音楽信号エネルギーを正確にスピーカーへ送り込むための低インピーダンス駆動回路で、信号レベルの変化でスピーカーのインピーダンス低下や逆起電力が生じてもパワー段を安定にドライブできるというものです。
また、最終パワー段は有害なスイッチング歪を発生しないダイナミック・スーパーA級をハイブリッドIC4個(左右2個使い)によって実現しています。
そのため部品点数と容積を大幅に削減でき、この時代にしてはハイブリッドICを使ったテクニクス同様に軽量薄型を実現しています。
サンスイやソニーが798戦争で物流勝負する中で、この両社は一歩未来を見て独自のハイブリッドICで低価格化を押し出しているのが何とも立派、それゆえの私の貴重なコレクションの1台なのです。
重量が軽いのに音質は信じられないほど低音域が充実しています、ゴリっとした締まった低音で小型スピーカーでも低音がゴツンと響くのには驚きます。
中高音域もシャープで嫌みがありません、これがハイブリッドICの成果だとしたら真の隠れた名機?
リファレンスに使ったダイヤトーンDS-200ZAがあまりにも見事な鳴りっぷりで、約半日もソースを入れ替えては聴き込んでしまいました、私的にはこの音色はかなり気に入ってます。
ちなみに、ビクターはこのハイブリッドICとその技術を同社プロフェッショナルブランドのVOSS製品に活かしてきます。
ハイブリッドICはヘビーデューティな使用が可能で、プロフェッショナル用としては申し分ないのです。
フォノイコライザーもMMとMCが付いており、CDも含めたオールソースに対応した音作りには脱帽です。
そして、低ノイズのスーパーA級での出力の割には発熱と消費電力が少ないのも最大の魅力です。