2021年1月 8日 12:00
私は、音の表現で「音質」という表現と「音色(ねいろ)」という表現を使い分けているのですが、これには訳があるのです。
音質は、低音域や高音域などの音の質そのものです。
レンジが高低に伸びているか、締まっていて切れが良いのかもたついているのかなどです。
対して、音色というのは例えば同じ音質でも広い部屋と狭い部屋での響き方が違うように、微妙なニュアンスでの味付け的な要素を指しています。
細かい事をいうと余計に解りづらいのですが、同じ周波数の音でも金属のお皿を叩いた時の音と、焼き物のお皿を叩いた時の音は似ているようで違います。
金属の方が叩いた瞬間からしばらく同じような音量を保ち、少しずつ細かなビブラートを残しながら小さくなり消えていきます。
実は、この間に基本の周波数の他に複数の小さな周波数の音が出ており、これが合成されてビブラートが生まれているのです。
焼き物の場合は叩いた瞬間だけは大きな音量ですが、急速に音量が減少しビブラートはありません。
つまりこういった微妙な違いを音色として表現して聴き分けているのです。
さて、このような音色の違いはアンプの増幅回路に使われている負帰還(NFB)回路によって生まれていると言っても過言ではありません。
必ずしもそれだけではありませんが、要素的には大きな位置を占めると思います。
負帰還(NFB)とは、1937年にウェスタンエレクトリック社とAT&T(アメリカの電気通信局)が設立したベル研究所によって提唱され、1947年に発明者である技術者の名前を付けてウイリアムソン増幅回路として発表された方式です。
原理は、増幅回路を通って増幅された電流を再度位相を逆にして増幅前の信号とミックスさせて増幅させるというもので、信号成分だけが増幅される為に大幅にノイズを低減できるというものです。
ただし、ノイズは大幅に低減するのですが音のシャープさが落ち、切れの悪い音になることが知られています。
このNFBの量やどの帯域の周波数に絞ってNFBにかけるかなどが各社のよって異なり、メーカー別のアンプの音質や音色となって現れてくるのです。
ちなみに、ラックスマンのアンプの中には周波数帯を2つに分けてのデュアルNFB方式をとっているアンプがあります。
このアンプの音色は独特で、マニアの間では「風邪引き声」もしくは「鼻つまみ声」と称されています。
これもまた好みの問題で、温かみがあってマイルドで聴きやすいという人もいるのです。
聴感覚も十人十色であるように、オーディオアンプの音色も十機十色だということです。