2019年1月31日 00:00
技術系企業の経営者によくある勘違い、それは「特許を得たら、楽に儲けられる」という幻想です。
実は、事実として特許を取得しても一銭のお金にもならないのです。
弁理士の質にもよりますが、出願に50万円、審査請求等に20万円、拒絶後の再請求1回で20万円、特許取得後の維持費にまた30万円、1つの特許で100万円は軽く超えてしまいます。
それでも、企業は特許出願の重要性を見いだせれば特許出願を繰り返します。
ただし、有益な特許とは、それを利用してもらうことによって初めてお金に変わる金種となることを忘れてはいけません。
戦後間もなくの頃の特許で、今でいう「使い捨てカイロ」がありました。
この特許を取得したアイデアマンの社長さんは、すぐサンプルを作り各種企業へ特許の使用権販売を打診しました。
ほとんどの企業から、「採用したい」との返事を得ていながら、採用した企業は一社も有りませんでした。
さて、その理由は何でしょうか?
それは巨額の使用料を要求したのと、通常実施権のみで独占的事業権の付与を頑なに拒んだからです。
商品化し一般消費者へ販売するためには、製造だけではなくパッキングや流通、更には間接的なオペレーションも含めて多額の資金が必要となります。
したがって、そのリスクに見合う独占的な権利を得なければ、事業として考えた場合、何れ競合他社がひしめき合い、先駆者利得が取れずに採算が合わなくなる可能性があるのです。
したがって特許権を取得する側としては、当然独占権を主張するのです。
結局その20年後、当時採用を検討した企業から、一斉に独自開発による「使い捨てカイロ」が売り出されました。
そうです、特許の有効期限は取得から最長で20年、特許が切れるのを待ちわびたかのように各社一斉の発売なのでした。
そして、特許を取ったその社長さんは、一銭も利益が無かったばかりか、サンプルや特許権を売るための多くの時間と費用を無駄にしてしまったのです。
技術特許や製法特許は、現在では戦略的にあえて出願しないという手もあります。
何故なら、例え特許化しても20年後には自由にその技術や製法が使われてしまうからなのです。
実はビジネスとは、特許など無くてもいち早く資金投入しで商品化した者勝ちなのです、それが現代のビジネスにおけるスピード感というものなのです。
そして、「特許を取得しただけではお金にはならない」事を理解すべきなのです。
そもそも、特許とは儲ける目的の剣ではなく、自社の技術やサービスを一定期間他者の参入を阻止し、事業推進を守る目的の盾なのです、これを見誤ってはなりません。
特許戦略を見誤ると、とんでもない結果になることを覚えていてほしいと思います。
私も90を越える特許を出願していますが、すべてが一定期間自社の技術やサービスを保護する目的です。
そしてたまたまです、幾つかの出願が特許登録され大きな収益を生んだのは。