今回の話しは「養蚕」、つまりカイコの養殖です。
これを考えているという事は、食と健康に結びつけた「食虫」かと思われるかもしれませんがまったく違います。
確かに、現在医学界でも昆虫の栄養素や医薬品への応用として多くの研究がなされています。
特に癌治療薬としてカイコガの幼虫やサナギのタンパク質が癌細胞の増殖を抑える効果などが実証されつつあります。
昆虫全般に身体はコレステロールゼロのプロテインスコア100の高タンパク質で構成されている事が知られており、食材としても世界中で研究されている事実もあります。
中国にはセミの養殖が盛んで、これはサナギの殻がアレルギー全般に効果が有る事が知られており漢方薬の原料としています。
今後、昆虫は多くの研究素材になっていくのは間違いありません。
また、昆虫の生態や形状は昔から飛行体やロボット移動方式としてのモデルになっています。
新幹線やスポーツカーの流線形は、水性昆虫の完璧なまでの流体力学的なカーブから生まれており、空気抵抗をほぼゼロにまで近づける事に成功しています。
更には、チョウや甲虫類の一部に見られるメタリックな色彩は表面の反射構造から起きており、これらは塗装技術や迷彩技術などの光学としての応用が盛んにおこなわれています。
ロボットの移動方式では6本足移動の動きが再現されており、地上がどのような形状であっても高速で安定した移動が可能となり、特に惑星探査ロボットや災害時の救助ロボットなどに応用されています。
こうした多くの分野で昆虫は今後、益々研究素材として扱われていく事になります。
さて私が養蚕のどの分野に興味を持っているかと言うと、それは捨てられていくカイコの繭(まゆ)の外側の茶色く堅くなっているところなのです。
ご存知、カイコの繭は絹そのもので非常に繊細かつ丈夫な繊維です。
このカイコの繭の外側は、内側の絹になる部分に比べて高タンパク質で多くのレアな栄養素がびっしり詰まっています。
これらを専門に研究しているベンチャー企業も存在しているくらいで、一旦粉状にして再生すると高抗菌剤としての応用などが研究されています。
例えば、このシルクパウダーを繊維に練り込むと菌が殆ど増殖しない抗菌布が完成します、これは医療だけではなく多くの分野でニーズがあります、また応用例は未知数と言っても過言ではありません。
この抗菌布ですが、実験では靴下に加工した場合ほぼ100%菌の繁殖を抑えてまったく臭わない靴下が既に完成しています。
ただ現在の問題は、繊維が綿だけのものに比べて弱く繰り返し洗濯すると徐々に繊維が解れてしまう点です。
これは混合する素材を研究すれば解決できる問題だと考えています。
調べれば調べるほど天然素材としての利用価値が解ってきます、菌類の研究の真逆な陰陽の要素を持つ高抗菌剤としての研究は大きな意味が有るように思えてなりません。
例えば、インフルエンザウイルスやコロナウイルスを完全にシャットアウトするフィルター(マスクなど)・菌を使用する工場でのクリーンルームでのエアフィルター・水耕栽培での嫌気性バクテリアの増殖防止など、その応用範囲は無限大です。
菌の研究と抗菌剤の研究、この陰陽真逆の研究が何時かはどこかで何かをきっかけに結びつくような気がしてならないのです。
自然界全ての事項に陰陽は一体となって存在しています。