
オーディオ道楽復活後は日夜オーディオ妄想が止まりません、先日は「間接オーディオっていうのはどうかな?」なんて漠然と考えていました。
光には間接照明というのがあります、音にも間接音響というのが在ってもいいのではないかと思うのです。
間接音響といえば隣の部屋に回り込んでくる音が間接音であり、直接スピーカーから出ている音とは異なり高音域が遮断された音で刺激の無いぼんやりとした音がします、これは光の間接照明と同様で刺激が無く聴きやすい音でもあります。
高音質を目指したハイファイオーディオではありませんが、何かをしながらの「ながらオーディオ」としては邪魔にならない実に好ましい音がします。
そこで密閉型の小型サラウンド用スピーカーを使って実験してみたのです、スピーカーを後ろ向きにして壁にスピーカーユニットが向くように配置して音楽を聴くのですが、これが思いもよらない効果がありました。
それはどこから聴こえてくるのか解らないという効果で、臨場感こそ有りませんがどこに移動しても同じような音質と音量で聞こえるのです。
また懸念していた高音域の減少もそれほど大きくなく、しっかりと高音域も聴こえてくるのです、これにはかなり驚きました。
後ろの材質や反射の仕方で聴こえ方がガラリと変わり実に面白い実験でした、置くだけで間接音響が出来上がるというスピーカーが在っても良いと考えてしまいます、また一つ愉しい夢が生まれそうです。

オーディオ界には、昔から名機と呼ばれる製品があります。
しかし、その明確な定義というのは存在していません、オーディオ評論家やオーディオマニアなど多くの人から絶賛された製品が後に名機と謳われるのです。
その意味でアンプの名機の多くはその時代を代表するような傑作品で、価格・音質・スペックとどれをとっても優れた製品を称え名機と呼ばれます。
その意味からして高級なハイエンド製品は全て名機かというとそうでもありません、何故なら価格が高くて音質が良いのは当たり前だからです。
手頃な価格でありながらハイエンド製品に劣らぬ音質で大ヒットを飛ばし、且つ後続機を出しながらシリーズ化されロングセラーを続けたミドルクラスの製品に付けられる傾向があります。
サンスイであればAU-α607であり上位機種のAU-α907ではありません、ソニーであればTA-F333であり上位機種のTA-F555ではないのです。
私もこういったミドルクラスでありながら、上位機種やハイエンド製品と同じ回路を使った定格出力だけのダウンサイジング版など、音質・音色は同じで価格だけが手ごろ感のあるアンプを高く評価し購入する傾向にあります。
また、後に系譜を辿るとその製品が実は名機であることが解ると後追いで優良中古を求めることもあります。
70年代のヤマハのCA-2000が絶大な評価を得た後、その系譜の発祥であるCA-1000が製造中止になっていたにも関らず人気を博して中古価格が上がり初め慌てて購入したこともあります。
こういった製品は、歴史的な価値と製品そのものの音質的価値が評価され後に名機と謳われるのです。
名機と謳われるアンプにはそれなりの意味と理由が存在しています、持つ喜び以上にこういった名機は何年経っても音質の古さを感じさせません。
名機とは名機と呼ばれる根拠がしっかり在ります、ストックラックに収まっていても名機に相応しいオーラを何時までも放っているのです。

ラックスマンの祖業は錦水堂額縁店のラジオ事業でした、当時錦水堂が発刊した「ラヂオブック」は多くの電子工作マニアを釘付けにした電子工作の神本でした。
これをきっかけにして、多くの電子工作雑誌が発行されるようになったのです。
ちなみに昭和初期の頃は「ラジオ」ではなく「ラヂオ」と記述していました、面白いですね。
日本の電気工学ものづくりに大いに貢献した1冊、どれほどの価値が有るか解りません。
私が電気工学に目覚めたのは中学2年生くらいの頃です、いろんな物を雑誌を見ながら作りましたが、大作は真空管5本を使ったラジオ(五球スーパーヘテロダイン)です。
生まれて初めてのハンダ付け、祖父に教えてもらいながら半日かかりましたが、音が出た時には嬉しかったですね。
この真空管ラジオ、まだ実家に残っています。
実家から真空管アンプや大型スピーカーを持ってくる時に、一緒に持ってくる計画です。
そんな電子工学少年の育成に貢献した「ラヂオブック」、その頃の雑誌に表紙だけ載っていた記憶があり、50数年経った今ネットで探したらなんと書籍の全てが公開されていたのです、なんという善き時代になったのでしょう。
真空管アンプの基本がここに在ります。
錦水堂ラヂオブック 出筆者:早川迭雄(ラックスマン創業者)
https://ay-denshi.com/download/radiobook_1.pdf

自身のオーディオコレクションを記録管理する目的で年代別に価格と共にリストアップしているのですが、ここで面白い事実が見えてきました。
それは、70年代から80年代のアンプではサンスイが圧倒的に数が多いということです、またスピーカーではダイヤトーンです。
そして、90年以降になるとデノンやオンキョーの製品群が数を増やしていきます、どの年代にもリストに乗っているブランドがヤマハ・ソニー・ケンウッド(トリオ)でした。
これって、オーディオの歴史とオーディオメーカーの黄金時代そのものを素直に反映しているということが解ったのです。
つまり、私も素直にオーディオの時代における変化をそのままに受け入れていることということです。
時代が変わっても頑なに一環として自身の考えを通す人もいれば、私のように時代の変化に順応して自身を変えていく人もいるのです。
どちらにしても、どっちつかずの中途半端に時代に翻弄される人よりも良いかと思うのです。
それにしても、見事なまでに時代を反映しているコレクションデータに流石の私も驚きました。
今回の手持ち製品の発売時期や価格を改めて調べ直していくうちにいろいろなことが解ってきました、コレクションとはただ集めるだけではなく歴史やその周辺の状況などを学べます、これがコレクションギークの一つの愉しみなのです。

1980年代に起こったスピーカー598戦争(1台5万9800円、セットで約12万円)は、オンキョーのD-77の発売によって勃発しました。
そんな激しいミドルクラスのスピーカー598戦争ですが、その裏でも別の598戦争が水面下で繰り広げられていたのです。
その裏の598戦争とは、1988年に勃発したCDプレーヤーの598戦争でした。
この年の5万9800円のCDプレーヤーを一気に列挙してみましょう。
ついでと言ってはなんですが、それぞれの製品の要であるDAC仕様も調べましたので合わせて紹介しましょう。
・ソニー CDP-228ESD バーブラウンPCM58P(モノラルDSPを左右分離で使用)
・ケンウッド DP-7010 バーブラウンPCM58P(モノラルDSPを左右分離で使用)
・ビクター XL-Z521 バーブラウンPCM56P+2bitディスクリートDAC
・パイオニア PD-717 アナログ・デバイセスAD1860N-J(モノラルDSPを左右分離で使用)
・テクニクス SL-P777 松下電器MN6741(独自の1bitマッシュ方式)
さて、その後CDプレーヤーやユニバーサルプレーヤーで名を馳せるデノンはCDプレーヤー598戦争を他所に6万円ジャストの値付けでマイペースな製品作りをしていたのは面白いです。
アンプ798戦争やスピーカー598戦争、そういった世の流れには翻弄されずのこの我が道を行くという姿勢は立派です。
今となってはですが、どの業界でも他社動向に翻弄される企業よりもマイペースに進めていた企業がバブル崩壊後に拡大成長していった、この事実は事実として記憶してほしいと思います。